湯を使う風呂が一般的でなく、衛生に関する知識や医療が不十分であった時代には、温泉は怪我や病気に驚くべき効能があるありがたい聖地ででした。各温泉の起源伝説には、鹿や鶴や鷺(サギ)などの動物が傷を癒した伝説や、弘法大師等高名な僧侶が発見した伝説が多く残っています。このような場所は寺や神社が所有していたり、近隣共同体の共有財産でした。
江戸時代頃になると、農閑期に湯治客が訪れるようになり、それらの湯治客を泊める宿泊施設が温泉宿となりました。湯治の形態も長期滞在型から一泊二日の短期型へ変化し、現在の入浴形態に近い形が出来上がってきました。
温泉はヨーロッパでは医療行為の一環として位置付けられているが、日本では観光を兼ねた娯楽である場合が多く、学校の合宿、修学旅行に取り入れる例も多いです。もちろん、湯治に訪れる客も依然として存在します。
一旦浴槽に注いだ湯を再注入するか否かで循環式と掛け流しに分類されます。循環式においては、一度利用した湯を濾過・加熱処理をした上で再注入しています。近年掛け流しを好む利用者の嗜好により、源泉100パーセントかけ流し等のキャッチコピーで宣伝しているところもあります。
本々の温泉の利用形態は野湯の状態であり、掛け流しという言葉は用いられることはありませんでした。対をなす言葉である循環風呂が登場以降も、すぐには掛け流しに対する注目は集まらず、むしろ循環風呂との比較で水を有効利用せずに無駄に垂れ流していると見る者さえいました。
掛け流しに対する注目が最初に集まったのが2000年から2002年にかけて発生したレジオネラ菌騒動である。日帰り入浴施設などに設置された循環風呂設備で繁殖したレジオネラ菌を原因とした死亡事故により、菌の繁殖の温床となった浴槽内循環機を用いない、昔ながらの掛け流しに対して注目が集まりました。
その後温泉愛好家の間では、その風呂が掛け流しか循環風呂かが温泉を楽しむ要素として着目されるようになっていきました。2004年に発生した温泉偽装問題以降は、顧客の源泉志向に対応するため、源泉掛け流しをうたい文句にする旅館、入浴施設が多くなりました。さらに現在では浴室が全戸掛け流しの温泉である事を宣伝文句にしたマンションまで現れてきています。
「循環式」は限られた量の温泉を有効に活用するため、湯を「泉源→浴槽→浄化(消毒・ろ過)→浴槽→浄化→浴槽・・・」というようにリサイクル利用するシステム。つまりプールと同様の浄化システムを温泉浴場に導入したものです。
かつて「温泉が自然に湧出している場所」に浴場がつくられ、浴場の規模も小さく数も少ないうちは、温泉といえば基本的に「源泉掛け流し」でした。
しかし、温泉ブームで湯の供給量より需要が増大し、多くの入浴施設で「循環式」が採用されるようになりました。大規模でデラックスな浴場をもつ入浴施設で「循環式」を採用していないものはほとんどありません。
大きな温泉地の宿の風呂も、大きな湯船をもつものは大半が基本的に「循環式」になっているといえます。
Last update:2022/8/30